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2005.10.02
パトレイバー2は釣りバカ日誌1から生まれた。
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東京が農村対都市の構図を強力に持っていた頃を彷彿させるレストランで友人と映画の話をしていた時に、ずーっと思っていたことを思い出した。それは『釣りバカ日誌1』が『パトレイバー2』を生んだのではないかということだ。
四国・高松で暮らす釣りバカの浜崎伝助(西田敏行)は、ある日突然、東京本社への転勤辞令を受けた。しぶしぶ辞令に応じて、北品川の釣り宿の二階に間借りする伝助。
最も重要な台詞はアパッチけんが発するこの台詞である。
「陸(おか)を行くやつはバカよ」
この台詞は浜ちゃんが日本橋付近にあると見られる会社に船で出勤する冒頭のシーケンスに登場する(ということはこの後10作以上続くシリーズの冒頭シーケンスでもある)。
船から降りた浜ちゃんは、日本橋の袂から陸に登っていきタイトルが入る。東京を嘲笑する映画としては、最高のオープニングだ。
そう考えると、船主アパッチけんと浜ちゃんは、釣りが好きだから結びついているのではないこともわかる。
・東京ではなく江戸の延長の世界にいる船主
・地方出身でありながら東京の引力にひっぱられていない浜ちゃん
二人とも東京の内部にいながら外部から東京を見ているのであり、今の東京を嘲笑する者として友愛を結んでいるのである。
だから繰り返しになるが「陸(おか)を行くやつはバカよ」 なのである。
さらに浜ちゃんの上司が戦後進駐軍のどさ回りの中で成り上がったナベプロを代表するタレントである谷啓だというのは実に象徴的だ。
で、釣りバカでのこの話を踏まえた上で『パトレイバー2』の話に移る。
押井監督がいかに橋と運河に対して自覚的あったかは、2つの点から推測できる。
そんなある日、一発のミサイルが全てをひっくり返した。横浜ベイブリッジが爆撃されたのだ。しかも、その爆撃は自衛隊機が行なったものだという報道が 、社会にあらゆる混乱を引き起こす。
この映画のストーリー上で重要なのは、ミサイルである。とにかくまずは、ミサイルが自衛隊機から発射されることが重要であった。しかし、ミサイルがミサイルとして効果的であるためには、着弾する地点が必要である。東京を黙らせる着弾地点としては効果的な場所はいっぱいある(官邸とか議事堂とか皇居とか)。しかしこの映画では、その舞台として”横浜ベイブリッジ”が選ばれた。これはわざわざ選ばれたと言っていいはずだ(押井監督というのはそういう人である)。
日本橋の封印後、暴走し続けた東京は、バブル崩壊まで突っ走り続けた。そしてそのバブルの時期に久しぶりに橋にスポットがあてられた。その橋が”横浜ベイブリッジ”であった。東京を嘲笑する地点としてこれ以上のものはない。だから、あのミサイルは”横浜ベイブリッジ”にわざわざぶつけられたのだ。
運河については、2005年に森美術館で開催された「都市の模型展」で公開された”東京静脈”というフィルムがその証拠と言える。その映像は『パトレイバー2』制作時に撮影された東京を走る運河の入念なロケフィルムがベースになっている。
これは東京の内部にいながら外部から東京を見るには、運河からの視点が最適であると考えたからである。(だから今でも御茶ノ水界隈というのは重要な地点である)自覚的に行うにはロケが必須なのは言うまでもない。
映画という文脈においては、東京を嘲笑する視点として、東京の運河からの視点が橋とともに描かれた最初の作品は『釣りバカ日誌1』である。『パトレイバー2』の公開は1993年。釣りバカ日誌の公開は1988年。かつこの1988年というのは、一連のパトレイバー・シリーズの始まった年でもある。これは偶然ではないはずだ。
ということで!
『釣りバカ日誌1』を最初に見たとき、前述の冒頭シーケンスの見事さにやられまくっていた私が後に『パトレイバー2』を見たとき、これは釣りバカだ!と思ったことをつらつらと書いていたら、こんなことになってしまいました。山田洋次ってつくづくすげえなあ。
余談ですが『パトレイバー2』にはPKOに対する批判であるアンチ・グローバリズムもネタとして挿入されている。今、公開されている東京を嘲笑する映画『頭文字D』にもアンチグローバリズムの視点が入っていることも最後に記述しておきます。
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投稿:by いしたにまさき 2005 10 02 01:03 AM [映画・テレビ] | 固定リンク
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