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2005.10.09
小学生をマンガの題材とすることについて
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Young Youの休刊号(廃刊でしょ)を買った日にすばらしいマンガを読んだ。
『放蕩息子』志村貴子の(たぶん)最新作である。
ここには、これまでの小学生を登場人物にした少女マンガにはなかった人間の変容ということが描かれている。わかりやすく言えば、生理や精通に対する表現だ。
吉野朔実の『ぼくだけが知っている 』が結局は子供を舞台装置として利用していないことや、『Papa told me 』の知世ちゃんが結局成長を止めてしまっていることと比較すると、それは実にわかりやすい。
小学生を登場人物の中心に据えると、どうしても子供の仁義ばかりが描かれてしまう。もちろん、それを描くのが狙いなのではあるのだろうが、そこだけを描くのは私的にはルール違反だ。
子供の仁義というのは、変容前のかけがえないの時間であるからこそ、大人になっても仁義として通用する。
その部分にこれまでマンガでいちばん深く切れ込んだのが、『わたしは真悟』であることに異論はないと思う。なにしろ、「もう子供の時代にはもどれないのよ!」なのであるから(意味不明な人は真悟読んでください)。
ただ、この『放蕩息子』には真悟にすらない性差に対しても、小学生は変容前の時期である、ということを描こうとしている。
しかも、それは実に冷酷に描かれている。その冷酷さはあの『さくらの唄』の体育館のシーンとダブりさえする。主人公二人の交換日記を巡るシーケンスは読んでいて、胸がしめつけられて涙が止まらない箇所がいくつもある。
ただ、これはしょーがないことだ。だって絶対に自分の体に起こる変容をなんらかの形で受容しないといけない時期がきてしまうからだ。
『わたしは真悟』の場合、それを全部真悟に託してしまった。その証拠に悟も真鈴もほぼすべてのことを忘れてしまい、真悟自身も実は本当のことは覚えていない(覚えていないのに進み続けるからこそ、あの物語は美しい)。
しかし、この『放蕩息子』ではそこすら描こうとしている。しかも、作者本人はそのことにとても自覚的だ。そして、すでにその変容に対してノーと言った大人もキャラとして配置されている。これが用意周到でなくてなんであろうか。
で、実はその用意周到さが仇になるのかどうかは知らないが、志村貴子のマンガの1巻は大抵あんまり面白くない。ただ、これは物語のいわゆる滑走路の部分だ。3巻辺りから一気に面白くなる。だから、志村貴子のマンガは1巻で判断しないで欲しい。
さてさて、こういった(どういった?)意味で、このマンガもまたグレーゾーンの物語だ。この先、どう展開していくのは、表現としての冷酷さがどうなっていくのか。本当に楽しみだ。
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投稿:by いしたにまさき 2005 10 09 04:27 AM [アニメ・コミック] | 固定リンク
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