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2006.08.18
トマス・ピンチョン最初に読むならこの一冊、そしてログデータとぼくの関係
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結論を先に言ってしまうと『競売ナンバー49の叫び』を最初の1冊としてはおすすめします。
- 普通の小説して楽しい
- メタ的に読み込もうとすればいくらでも可能
- 志村正雄さんの脚注がすごすぎる
- つーか、冒頭のタッパーウェアパーティの描写で一気にひきこまれる
以上がおすすめする理由。
他のピンチョン作品もそりゃおもしろいことこの上ないのだが、いかんせん難しい。いや、なんというか飛ばし読みをすると全く面白くないし、正直一読ではなんのことだかわかんない。しかも、みなが陥る罠があったりします。
いかにも手強そうな分厚いタイトルの並ぶピンチョン作品の中で『スローラーナー』という唯一の短編集があるんですね。なので、うっかり手にとってしまうんです。それが大きな罠。この短編集がいちばん難しいのです、だはは。
まあ、とか言っている私も実は『重力の虹』については既に20回以上挫折しているわけです。
さてさて!
『V.』とその続編であると言える『重力の虹』に対する過去に読んだことのある書評の中で最も簡潔で適切と思える佐藤良明さんの文章を以下に引用します。
20世紀の全体を舞台にしてテクノロジーが作り出す死とエントロピーの王国の隆盛ぶりを描いて見せたもの。つまり、テクノロジーというのは、地球全体を無機質のシステムでおおいつくすエージェントぐらいに見なされていた。つまり、テクノロジーの中心軸と僕らの生の中心軸とが、ここではひとつに重なっていなくて「何か」(it)が「ぼくら」(us)に対して何かするみたいな構図が見られた。本当に怖いのは人間であるー生の秩序のエントロピックな崩壊ではなく、そのネゲントロピックな(つまり負のエントロピーの)はびこりであるーという視点が『V.』ではまだ明らか形で現れていなかった。
ライフスライスを経験した上で、私がはっきりとわかっていることはパーソナルなログデータというのは、その当事者にとっては「何か」(it)が「私」(me)に対して何かすることがテクノロジーの中心軸と生の中心軸とが重なる可能性をもっていることである。
ライフスライスで撮影された写真というのは、パーソナルなログデータであるが故にそれを見る撮影者本人と他者との間で情報量がまるで違う。撮影者本人にとっては、過去に見た光景であるが故に、ちょっとキーで当時の経験がぶわっと呼び起こされるのである(ちらっと写りこんだPCの画面で当時の仕事の内容思い出したりとか)。
これをブログに変換すると、エントリーの発信者と受信者とでは同じエントリーを見ていても、そこから感じ取る情報というのはまるで違うということになる。ブログは基本的にパーソナルなものであるべきだと思うのも、つまりはここにかかっている。なんでもシェアすればいい様な風潮だが、シェアだけを吸い上げることなんかどだいできっこないのだ。
ただ、そのパーソナルなログに対してぼくが何かするなんてバカげたことはもうしたくない。
ログがぼくに何かをしてくれるものとして、テクノロジーを捉えないとあっという間に袋小路なのではないか?じゃあ、ログとぼくとの間にエージェントがいればいいのかというと、それでは面白くない。ドリオ(って誰?)のようなおれの日々の手癖を覚えてくれるフレンドの様な存在が必要なのだというのがきょう段階の仮説である。
ということでいよいよ『重力の虹』を読まなくてはいけないらしい。マーケ本なんか読んでられるかっつーの。
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投稿:by いしたにまさき 2006 08 18 01:52 PM [重力の虹を読むライフスライス] | 固定リンク
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» やっぱり、エントロピーからはじめないといけないらしい。 from [mi]みたいもん!
正月はまさにくっちゃねくっちゃねしていたのですが、ちょっとは何かを考えるタイミン 続きを読む
受信: Jan 4, 2007, 12:07:05 AM