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2008.05.02
『新・都市論TOKYO』に見る隈研吾のフラットさ
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今、日本でいちばん充実している建築家をあげると必ずそのリストに入る建築家が隈研吾さんです。表参道から外苑前辺りまでは、もう隈研吾作品だらけです。

(写真は隈研吾さん初期の代表作「M2」)
隈研吾さんの世間的なイメージというのは、建築を勉強している学生などに聞いても、
- 頭いい
- シニカル
- なんかわかんないけど、うまくやってる
というイメージのようです。
確かに以下の隈研吾著作から受けるイメージというのは、実にそうです。どちらも実にいい本です。
ただ、個人的には隈研吾さんとはライフスライスプロジェクトの際に、何度か話をする機会があったこともあり、
- ピュア
- フラット
- フランク
というイメージをもっています(ということで、以下親愛の意味を込めて『隈ちゃん』と表記します)。
隈ちゃんのシニカルさの由来となっているものは、隈ちゃんは建築家だけではなく、建築史家でもあるという部分に裏打ちされています。でも、それは同時にピュアさの発露でもあります。それはもはや建築系では定番ともなっている『新・建築入門』を読むとよくわかります。
『新・建築入門』は、歴史的な視点での建築入門であると同時に、今のわれわれが享受している建築が歴史の上に成り立っていることを1冊で知ることができるすばらしい本です。建築について何かを勉強したいという人に相談を受けると、まよわずこの本を薦める理由はここにあります。そして、大事なのは、この本は隈ちゃんが売れっ子になる前に書かれた本であるということです。
そして、もはや売れっ子となった隈ちゃんが東京について都市論をベースに対談しているのが『新・都市論TOKYO』です。
▼新・都市論TOKYO (集英社新書 426B) (集英社新書 426B)
この本で隈ちゃんは5つの街について語り、実際に足を運んでいます。
- 汐留(リスクヘッジのつまらなさ)
- 丸の内(三菱の自己矛盾)
- 六本木ヒルズ(いろいろあるが評価したい)
- 代官山(いくつかの奇跡)
- 町田(思わぬ発見)
- 北京(おまけ)
最後に町田をもってくる辺りが実にらしい感じですが、すべての街において隈ちゃんの言説は実にフラットです。事実は事実として語り、街を歩いた粗直な印象を加えた上で、さらに言葉を重ねています。
▼首都高から見る六本木ヒルズの異様さ
リンク: 首都高ドリフト!.
最後のフランク。これはもう私が話した印象でしかないんですが、しがない何者だかわからない相手に対しても発表するものに対して「ピュア」に「フラット」に応答してくれるんですね。
そして、既にあるものや、それが誰の発表したものでも「ピュア」に「フラット」に応答するから、その言葉が場合によってはひどく「ばっさり」と「シニカル」に見えることもあるのではないかと思います。
さて、『新・都市論TOKYO』には、ぜひ続編を期待してしまいます。そのぐらいに街について知らないことが書かれており、理解を深めることができました。でも、『新・都市論TOKYO』も出来上がるまでに5年以上かかっていることを考えると、ちょっと難しいかもしれませんね。
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投稿:by いしたにまさき 2008 05 02 11:24 AM [建築書評] | 固定リンク
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