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2008.08.17

「崖の上のポニョ」は引退作がうっかり最高傑作になってしまった映画である




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「崖の上のポニョ」を見なくてはいけないという使命感に無駄にかられて、新宿まで見にいってきました(ネタバレまくりエントリーにつきご注意)。

もちろん、予定通りの仮説をひっぱったままです。

 リンク: 「崖の上のポニョ」というか宮崎駿というプロジェクトのわかりにくさ.

ということで、私はこの「崖の上のポニョ」は黒澤明へのオマージュなのではないか?」という仮説を秘めて、再来週にでもポニョを見にいきたいと思います。

まず結論を先に言ってしまいますが、この「崖の上のポニョ」という作品は、宮崎駿さんが、引退作を作っているつもりで、途中からすっかり映画作りが楽しくなってうっかり最高傑作作ってしまった作品なのではないかと思います。

私、映画館で2回泣きました。

1回目は冒頭シーン。映画タイトルが出てくるまでの海のシーンです。このシーンを見ているうちに「ああ宮崎さんホントに引退作のつもりなんだ」と思ってしまったからです。

宮崎映画の多くの作品にあるダイナミズムというのは、主に上下運動の繰り返しに支えられています。

  • 上 → 下 → 上

カリオストロの城、ナウシカ、ラピュタなどで、これはもっとも顕著に見られます。

  • カリオストロの城:城 → 地下水路 → 時計台
  • ナウシカ:空 → 腐海の下 → 王蟲の触手によって持ち上がられるナウシカ
  • ラピュタ:空から降ってくるシータ → 炭坑 → ラピュタ(の崩壊)

「崖の上のポニョ」にも、当然上下運動はありますが、それは水の状態の変化によって与えられるもので、これまでの作品の様に主人公たちが動くことで変化していくものではないわけです。

しかも、ポニョは冒頭いきなり下から上に上がってくる。これは今までとまったく違う、つーか真逆。うわああ、これは宮さん本気で引退する気だ、と思ったわけです(と同時にこれはバットエンドな映画なんだろうなあと思った)。また、これまでの宮崎映画のロジックで言うと、このお話の主役はリサ(かフジモト)なはずなんですね。

で、その引退への本気ぶりを示すものは、作品中にいっぱい出てきます。

  • そのリサが「♪わたしはげーんきー」と唄う
  • 老婆が集団でいるのは、紅の豚の婆さんたち
  • 水位の上がったリサと宗介の家は、のこされ島

こういった過去の作品の引用というかオマージュというかなんというかこういったものは宮崎さんは基本的にやりません、つーかやるわけない。この辺も引退感がたっぷりです。

ところが、この引退感があるシーンできれいさっぱり消え失せます。つまり、宮さんの本気が自身の引退ではなく、作品にガツンと入ってくるシーンです。

そこが私が2回目に泣いたシーンです。

それは、一度海に戻ったポニョが人間の姿となって宗介のところに戻ってきて、リサがちゃんとポニョを認識したシーンです。

このシーンで、リサは宗介とポニョに対して「これから不思議なことが起こるけど、二人でがんばるのよ」というようなことを言います。

これはリサからの宗介とポニョへの忠告であり、観客である我々への宣戦布告であり、同時に宮崎さんの自身の「ここから本気でいくぞ!」というスタッフへの怒号のようなものです。

 リンク: 『崖の上のポニョ』は15万枚かけた動く絵本 ([の] のまのしわざ).

そして宮崎駿流の絵本として出来たのが「動く絵本・ポニョ」ではないかと。

のまさんは既に指摘していますが、ポニョをいわゆるストーリーものの映画として理解することには意味がありません。だって、絵本だし、要するに児童文学だからです。つまり奇想天外でなにが悪いということです。

のまさんは絵本を思い出しているようですが、私はエルマーの冒険三部作を思い出しました。

エルマーのぼうけん
エルマーのぼうけん

エルマーとりゅう
エルマーとりゅう

エルマーと16ぴきのりゅう (世界傑作童話シリーズ)
エルマーと16ぴきのりゅう (世界傑作童話シリーズ)

児童文学に込められているメッセージというのは、表現の大小はありますが概ね以下のようなことです。

  • 子供時代に不思議なことなんかあるに決まってる
  • それを大人になって覚えてないやつは大バカものだ

で、ジブリということで考えるとこの児童文学というフィールドは、高畑さんのフィールドなんですね。だから、今までは宮崎さんは意図的に手を出してなかったのかもしれないし、高畑さんよりもうまくやれるかわからないという部分もあったのではないかと思います。

そこに挑戦するというのは、ある意味引退作だからトライしたいと考えることもできますし、映画を見終わった今となっては完全に新境地だと思えるわけです。

過去の宮崎アニメと比較すると、児童文学っぽさと毒気とスタックロールで考えると 「パンダコパンダ」がいちばん近い作品なんじゃないかと思います。

パンダコパンダ
パンダコパンダ

さて、とはいうものの、児童文学だから話の筋通ってないとか、お話にどこかよりどころが欲しいという場合には、「崖の上のポニョ」はお姫様の家出の話と理解すれば、いいのではないかと思います。

えー!っていう人もいるかもしれませんけど、ほらお姫様だから家出のスケールも違うんですよ!私はそういうことでいいんだと思ってます。

で、そういう意味では宗介はたぶん幸せになれないんですね。一生、お姫様のお守をするか、もしくは、お姫様を裏切るかの人生になってしまうわけで、ほらやっぱりバッドエンドだ。

さて、そもそもの仮説のことをすっかり忘れていました。

 リンク: 「崖の上のポニョ」というか宮崎駿というプロジェクトのわかりにくさ.

ということで、私はこの「崖の上のポニョ」は黒澤明へのオマージュなのではないか?」という仮説を秘めて、再来週にでもポニョを見にいきたいと思います。

フジモトって、なんでフジモトなんて名前なんだろう?と思っていたのですが、黒澤明は普段は御殿場の別荘に住んでいたわけで、つまりふじのふもとに住んでいた=フジモト、ってのは大人のうがったものの見方ですね、すいません。

ただ、「まあだだよ」がそうであるように、最後期でありながら、新境地を開拓しているという意味では、後期黒澤作品に見終わった後の感覚が似ているという感想をいろんなところで聞いたのは、これなんだなあと合点がいきました。

ところで、所ジョージがすごいこと言ってます、さすがだなあ。

 リンク: 映画/遂に公開! 山口智子「宗介の元に突っ走るポニョに女の本質感じる(笑)」.

所さんは「絵を志している人が観ると、自分の才能のなさに気づいて『あきらめよう』と思ってもらえるかもしれませんね」と答え、これに宮崎監督も大爆笑だった。

最後に!悪いことは言わないから!「崖の上のポニョ」は、スクリーンで見ときましょう。家で見るにしても、大画面パネルとブルーレイは必須です。

これは映画はフィルムで体験しろ!とかいう問題じゃなくて、解像度が追いつかないです。

さて、「崖の上のポニョ」については、このブログとのまのしわざの野間さんとで、お互いに言葉を交わすような交わさないような感じで、お互い言いたいこと言ってますが、それは同じものに対する同じ評価を違う目線で切り取っているだけなのではないかと思います(実はONEDARI BOYSの強さというのもここにあります)。

で、それを受け入れる度量というか、姿勢というか、覚悟というか、そういう態度こそが、ブロガーでブロガーである理由なのではないかと、今回の一連のエントリーを書き続けていて、改めて自覚した次第です。

【みたいもん!とのまのしわざにおける「崖の上のポニョ」談義】

崖の上のポニョ (監督 宮崎駿)-DVD

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投稿:by 2008 08 17 02:42 AM [映画・テレビ] | 固定リンク

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