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2013.08.23
コンテンツと人とログは何を生み出すのか?『インターネットを生命化する プロクロニズムの思想と実践』
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本と著者の関係というのは、実にいろんなパターンがあります。本よりも本人の方が面白いとか、本人よりも本の方が面白いとかいうのは、まずあります。
また、本と著者の力量ということで言うと、著者が本を書きたくて書いている本・書かれるべき本があり然るべき著者が書いている本なんていうのもありますね。
で、個人的にはいちばん問題だと思っているのが、代表作がどう考えても3つぐらいないといけない人なのに、まだ1冊も本を書いていないというやつです。
ネット界隈には、ホントに優秀な人たちがいっぱいいて、それで代表作がない人というのがいるんですが、その中でも、いちばん問題児だと思っていたのが、ドミニク・チェンです。
ドミニクといえば、いろんな顔がある人ですが、まずはクリエイティブ・コモンズ関連のこと。
リンク: 【インタヴュー】フリーカルチャーという思想をめぐって:ドミニク・チェンとの対話 WIRED.jp.
04年より日本におけるクリエイティブ・コモンズの立ち上げに参加し、07年よりNPO法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事。
これについては、すでに2冊出ています。
▼フリーカルチャーをつくるためのガイドブック クリエイティブ・コモンズによる創造の循環
▼オープン化する創造の時代 著作権を拡張するクリエイティブ・コモンズの方法論 (カドカワ・ミニッツブック)
でも、クリエイティブ・コモンズ関連のことだけが、ドミニク・チェンの持ち味なはずもなく、もっとネット上のコンテンツについての話をするべきだったわけです。
つまりは、こういう話です。
リンク: ICC ONLINEE | ARCHIVE | 2010 | ICC メタバース・プロジェクト | メタバース研究会.
プロクロニズムというのは,かいつまんで言えば「履歴が目に見える形で残っている」ということ.いまネット上で盛り上がっているコンテンツというのは,その「作品の出来映えがすごい!」というよりも,「この作品はどんなプロセスでできあがったんだろう?」とか,「他にどんな奴が来たんだろうか?」とか「どんな足跡が残されたんだろう?」といった履歴の集積体のほうが,少なくともいまのネット上では可能性があるし,面白いことになっているのだと思います.
で、その話の本がやっと出ました。ほっとしましたよ。
新著『インターネットを生命化する〜プロクロニズムの思想と実践』が刊行されました。作品の生成プロセスの歴史を追うことで生まれる価値についての実践と思索をまとめました。前著がCCなら、本書はDD(ディヴィデュアル)の活動紹介でもあります。 http://t.co/CnPhzQmrNq
— ドミニク・チェン (@dominickchen) July 25, 2013
ということで、やっと本の話になるわけですが、『インターネットを生命化する プロクロニズムの思想と実践』という本が、今回ご紹介したい本です。献本ありがとうございました。
【目次】
- 第1部 表現のプロクロニズムと相同(プロクロニズムの再発見/ 表現の境界、その生死と美/ 表現のプロクロニズムと相同のデザイン/ 表現のプロクロニズムと相同の実装)
- 第2部 コミュニティのプロクロニズムと相同(生きる表現の場のデザインに向けて/ 対話コミュニティの活性化/ 創造コミュニティの活性化/ ネオサイバネティクスの観点からのコミュニティデザイン)
- 展望 表現の生命的な継承と統治に向けて
目次をパッと見るだけで、難しそうな本であることは、もう伝わったと思うのですが、それは誤解じゃないので安心してください(笑)。
私も、なかなか読み進められない中、それでもやっぱり紹介すべきだと思って、ウンウン唸りながら書いていますので。
プロクロニズムとは「成長する生物は全て、自らの生態的プロセスを自身の身体に刻印し、それを外界に表出させながら存在している」ことを指す言葉です。この本では、ネットを介して伝播される「表現」とその「場」のプロクロニズムに言及しました。 http://t.co/5ZB5xTGGbZ
— ドミニク・チェン (@dominickchen) July 25, 2013
ブログを書き続けてきたことで、自分自身とても楽になったことが、確実に1つだけあって、それは私を見ている人の数だけ相手本位の見方があり、それぞれに相手本位の時間軸が流れていることを、私がブログを書きながら、時間をかけて(短絡的ではなく)学ぶことができたということです。
で、ドミニクは、きっとそのことを、別のやり方で発見して、実践していこうとしているんだと思うんです。
リンク: 【インタヴュー】フリーカルチャーという思想をめぐって:ドミニク・チェンとの対話 WIRED.jp.
つまり、中長期的にものごとを醸成する価値とか感覚をどうやったらインターネットを介してもっと共有できるんだろうって、いますごく思うんですよね。
つまり、コトを急がないことで生まれるコンテンツと場についての話が「プロクロシズム」であり、コトを急がないための法整備が「クリエイティブ・コモンズ」ということなんじゃないかと。
そして、両方に共通していることは、渦中の者には、なかなか取り組みにくい課題だということ。
でも、いつか誰かがまとめることで、未来に向けてのお土産となるようなものであること。
だから、この本の冒頭には、攻殻機動隊での人形遣いのあの有名なセリフが引用されているのです。
コンピューターの普及が記憶の外部化を可能にした時、あなた達はその意味をもっと真剣に考えるべきだった
この本は、きっと読むのに時間がかかっていい本です。あわてて理解する必要なんかありません。みなさんもぜひ、この本が与えてくれる時間を過ごして見ませんか?
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投稿:by いしたにまさき 2013 08 23 10:30 AM [書評, 献本] | 固定リンク
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