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2014.08.29
日本初のHDR本「HDR写真 魔法のかけ方レシピ」は極めてまっとうで開かれた写真本となっていました
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日本初のHDR写真本が発売されました。で、その発売記念のパーティに参加して、本を献本いただきました。ありがとうございます。
HDRなにそれ?という人もいると思うのですが、HDRとはHigh Dynamic Rangeのこと。つまり、基本は露出暗め+露出普通+露出明るめの3段階の写真を合成して、ダイナミックレンジの広い写真を撮る写真の技法のことを言います。
みなさんが持っているデジカメやデジタル一眼レフカメラにも、大抵の場合ブラケット撮影の機能がついているはずなのですが、これはHDRの撮影用などで使われる機能になっています。
でもね、このHDR写真って、意外とノウハウの固まりみたいなところがあって、それは技術や技法的なところだけではなくて、被写体との相性みたいなものもあるわけです。
はい、ということでHDR写真の解説本の登場というわけなんです。
▼HDR写真 魔法のかけ方レシピ ~撮ったあと生まれ変わる、写真のあたらしい楽しみ方
でね、先に感想を言ってしまうと、この日本初のHDR本。至極まっとうな本でした。
HDR写真撮影にちゃんと役立つやるべきノウハウが叩き込まれているし、これであなたの写真も完璧!みたいな変な煽りもない。
なによりも関心したのは、そもそもHDR写真というのは銀塩カメラ時代に、それもカメラの性能が不十分だった頃に、ある意味苦肉の策として編み出された技法でもあるのですが、そのHDR写真の歴史的な経緯についても、冒頭でページを取っているところ。
これ些細なことなんだけど、これがあるなしでは読後感はすっかり違うものになるという代物で、だから私も今こんな記事を書いているというわけです。
そして、そんな経緯がありつつも、今はデジカメの時代で、データを自由に加工できる。そんな時代の写真の在り方のひとつがHDR写真。この本ではメインの話は、当然その苦肉の策ではなく、写真をさらに楽しくするという意味でのHDR写真のことにほとんどのページが割かれています。
著者本人が撮影した大量のそれも世界中のHDR写真の作例をサンプルとして見せまくった上で、各ステップの準備です。
まずは必要なものということで、加工のためのソフトウエアの紹介です。
HDR加工の代名詞と言えるPhotomatixの紹介。
リンク: Photomatix 日本語版.
Photomatix Proは、露出の異なる複数の写真を合成処理することにより現実の景色などの持つ広いダイナミックレンジをそのまま記録、表示することができる、HDR(High Dynamic Range)画像作成ソフトです。
しかも、この本購入者であれば、以下のページから申請することで、Photomatix Proを割引でライセンスキーをかなり安くゲットできるといういたれりつくせりの仕様となっています。
リンク: サポートページ:HDR写真 魔法のかけ方レシピ ~撮ったあと生まれ変わる,写真のあたらしい楽しみ方:|技術評論社.
さらに、これも必須アイテムのAdobeのLIGHTROOMとPhotoshop、今なら以下の月額980円プランでどっちも使えます。これまじでおすすめ。
リンク: Creative Cloud フォトグラフィプラン | Adobe Creative Cloud.
世界最高峰の写真ツールを大変お手頃な価格でご利用いただけます。Photoshop CC と Lightroom の緊密な連携により、デスクトップやモバイルデバイスに対応する写真を処理する完全なワークフローが実現されました。
次にHDR撮影のためのノウハウ。HDR写真では三脚があった方がいいのですが、三脚がなくてもできることは実はいくらでもあったりします。それについても、ちゃんと書かれています。
個人的には、手持ち撮影であっても、HDR用の写真撮影にはライブビューで画角決めて、さらにセルフタイマー使うと、シャッターを押した際のブレが軽減されるので、それもおすすめしたいです。
さて、まだある。
今どき、写真の入門という意味ではスマホから始めるのが最善策です。スマホでやってみて、自分で楽しかった方向に興味を広げていけばいい。
ということで、iPhoneアプリのHDR系のアプリも紹介されています。この辺も実に隙がない本ですね。
Pro HDR
カテゴリ: 写真/ビデオ
価格: ¥200
HDR FX Pro
カテゴリ: 写真/ビデオ
価格: ¥300
Camera+
カテゴリ: 写真/ビデオ
価格: ¥200
また、アプリという意味では、自分がいるところ、撮影したいところの太陽光を調べるアプリなんかも紹介されていて、これにはうなりましたね。
LightTrac
カテゴリ: 写真/ビデオ
価格: ¥500
そして、撮影した写真を具体的にどう加工していくかのやり方の説明があり、最後に冒頭で見たHDR写真を加工した際にどう調整していったかのありえないほどに具体的なレシピがついています。
写真というものは、実はリバースエンジニアリングがとてもやりにくい領域なので、ここまで詳細な数値を含めたレシピを公開しているのはすばらしいことです。
でね、この全体的な本の構成がいいんですよ。
つまり、どういうことかというと、この手の本を買う人って、とりあえずは写真好きで、すでに過去に撮影した写真をいっぱいある人だと思うんです。
だから、HDR写真に必要なもの(ソフト)をまずは紹介して、それから撮影技法の話をして、それから加工の話をする。
これ、普通は撮影の話から入ると思うんですよ。でも、それだとまずは撮影からやり直しという印象になってしまいます。
でも、最初にソフトウエアの紹介をすることで、まずは手持ちのデータでソフトをいじってみようかな?という気持ちになります。この編集力はやるなあ、いいです、実にうまい。この編集の妙にうなりました。この構成の妙はいつか真似したい。
また、これは私の写真本「楽しいみんなの写真 -とにかく撮る、flickrで見る。ソーシャルメディア時代の写真の撮り方・楽しみ方」でも、暗に言わんとしていることなんですが、、、写真の解説って、どうにも修行僧みたいになりがちです。
でも、好きな趣味の世界で、なんで修行僧にならなきゃいけないの?といつも思うんです。だって、プロ写真家みたいな写真を撮ることが写真の正解じゃないんです。写真の正解なんて星の数ほどあるし、写真好きにとっていちばん大事なことは、写真の楽しさを味わい続けることに尽きると思うのです。
そして、どうしてこの本は修行僧っぽい本にならなかったのかな?ということを考えて見ると、著者本人のブログに答えは書いてありました。
リンク: 「HDR写真 魔法のかけ方レシピ」の本を書きました!技術評論社より出版します | URAMAYU.
「HDRの事をもっとちゃんと知って欲しいし、一回試してみて!絶対楽しいから!」
そう、これ。
この本は、とにかく楽しさを伝えたいという一点だけで成立している本なんです。そこがいい、実に小気味いいし、これからHDR写真とかをやってみようという人たちに対して開かれた印象を残してくれているのだと思います。
さて、最後に。
ほとんどの読者にはどうでもいい話かもしれませんが、この本著者にとっては処女作となります。
この本に大量に出てくるHDR写真も、著者自身の世界一周の際に撮影されたものです。
リンク: 世界一周しても価値観なんか変わらない | URAMAYU.私の世界一周旅行は、「人生の価値観が変わって何かが得られた」というよりは、これからしばらく社会を支える年代を健全に過ごすための「糧」となり、そして人生を後悔しないためのひとつの思い出づくりをしているのだと思いました。
まあ、世界一周は伊達じゃなかったということですよね。世界一周をした人の何がうらやましいって、まずは一周したやつの勝ちってことです。実にうらやましい。
そして、その経験が本というパッケージになることで、ここからさらに大きな変化があるはずです。自分の価値観はそう変わりません。でも、自分の周囲が変わっていきます。本が名刺になる=本を出すということはそういうことなんですよね。
ということで、とにかく処女作おめでとうございます。ホント、最初の本ってのはいいもんです。
しかし、私もまた写真の本を出したくなってきてしまったなあ。ここは自重自重だな(笑)。
▼紙版 HDR写真 魔法のかけ方レシピ ~撮ったあと生まれ変わる、写真のあたらしい楽しみ方
▼kindle版 HDR写真 魔法のかけ方レシピ ~撮ったあと生まれ変わる、写真のあたらしい楽しみ方
【追記】
この本の編集者であるサカタさんの記事。最初のハードルの話、なるほど!という感じですね。
リンク: 本を出したい人への小話。 - 簡素な生活。.
本を出したい、という相談はそれこそ山のように受ける。が、以下の3つが揃っていないと、最初のハードル、つまり私がお引き受けしない。
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投稿:by いしたにまさき 2014 08 29 02:42 PM [献本一眼,デジカメ(デジタル一眼レフ)書評] | 固定リンク
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